「地域をつなげるICTのあり方」
ー医療・介護間に横たわる情報連携の現状と課題ー
社会医療法人 高橋病院 理事長・病院長
社会福祉法人 函館元町会 理事長
一般社団法人 元町会 代表理事    高橋 肇 様

医療と介護のニーズがますます復号化していく超高齢社会では、慢性疾患を抱える本人の生活をいかに支援していくかが問われている。その人が今後どのようになるか想像できる形で次へ情報を届けていくことが医療機関・介護施設に求められているが、その基盤となる情報共有は思った以上に進んでいない。情報連携を阻害する要因を把握し理解した上で、情報共有を円滑化するためには何を行うべきか考えなければならない。
「情報」は、物事を渡すだけではなく、聞き手にその意味を伝えなければならないとされている。Drip Syndrome に陥らないように、入力された豊富なデータ・情報を知恵、知識として受け手に渡していくことが求められている。
特に地域包括ケアシステムを構築する際には、医療と介護間に横たわる視点の違い、双方の求める情報の相違をよく理解することが必要である。「医療側」と「ケア提供者側」間の情報交換を考えると、医療側の得意とする守備範囲は、内臓すなわち内側からの視点で、ICD(国際疾患分類)的な発想と言える。一方、ケア提供者側の得意とする視点は、ADL(日常生活動作)すなわち外側からの視点で、ICF(国際生活機能分類)的な発想と言える。医療者側は身体の中の病態像に着目し本人の健康維持を重視するが、ケア提供者側は日常生活の障害に着目し本人の気持ちや生活の質を重視するとも言える。
この4月の診療報酬改定で新たに登場した「入退院支援」では、病院においても入院中の医療情報を退院後いかに在宅に持っていくかだけではなく、入院しても「地域」での生活情報をいかに意識できるかが問われた内容となっている。本人が生活の主体として考えていかなければならない。
医療モデルの変化として、若い人は健康体として「社会復帰」する(病院完結型)が必要とされ、高齢者は障がいを抱えながら「生活復帰」できる(地域完結型)が求められている。超高齢社会を向かえる現代において「平均寿命」だけではなく「健康寿命」や「活動寿命」についても考えていかなければならない。
今後ますます診療情報、介護情報、生活支援情報など多岐にわたるデータが「地域連携」の名のもとに集まってくる中で、どのようにICTに向き合えば生活の質、地域の質が高まるかについて論じてみたい。
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広報委員  田中