こちらの分科会では、「ケアの向上の取り組み」「リスクマネジメント」に関する研究発表が行われた。

1、リロケーションダメージによるBPSDへの関わり~BPSD出現には原因があった!~
  ★特別養護老人ホームひだまり大麻
  ★入所課長 斉藤直美氏

アルツハイマー型認知症の診断を受けていた方がリロケーション(環境の変化)により周辺症状(BPSD)が出現。回想法を含めた関わりを行ったことで周辺症状が劇的に改善したことについて発表されました。


2、津波被害と施設移転
  ★特別養護老人ホーム様似ソビラ荘
  ★生活相談員 佐々木弘和氏

平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により甚大な被害を受けた時の被害状況や避難生活、施設移転に至るまでの経過と従来型特養からユニット型特養への移行による今後の課題について発表されました。


3、本人の願い、私たちの願い
  ★特別養護老人ホームかおる園
  ★介護職員 大路将也氏

脳梗塞にて左半身麻痺があり、常に車椅子を使用されている方へ歩行訓練を促すも「どうせ歩けないから」と消極的な方であったが、「函館に新幹線を見に行きたい」という願いを実現するため、自立支援介護の実施と歩行機能を獲得することで「自信」と「意欲の向上」を図ることができたことについて発表されました。


4、介護量を数値化する意味とは?
  ~移乗2名介助から歩く練習できるまでになった事例A氏を通じて~
  ★特別養護老人ホーム芦別慈恵園
  ★作業療法士 中尾亮介氏

日頃のケアや委員会活動でお客様の生活が改善しても、何が良かったのか、どこが改善したのかはケアに携わった職員しか把握出来ていなかった。他の職員にも把握しやすく、何が良かったのかを明らかにすることで、他のお客様にも活かせると思い思い、平成29年2月から機能的自立度評価(FIM)を導入した内容について発表されました。


5、笑顔になれる美味しいごはん作り
  ★特別養護老人ホーム太陽園
  ★調理員 佐藤紀子氏

喜ばれる食事、楽しみな食事を提供していきたいと思い、直接目で楽しんでもらい、食に対する意欲向上に向け、ユニットでの調理を始めた。嗜好調査の結果、料理が冷めている、温かい物が食べたい等の声があり、ユニットに調理担当者が出向き、家庭のように出来立てで温かい食事を提供することが可能となったことについて発表されました。


6、~オムツからトイレへ!~(実践で職員の考え方が変化した!)
  ★小清水町特別養護老人ホーム愛寿園
  ★介護福祉士 山崎美穂子氏

オムツ内へ排泄することに対し、個人の尊厳の視点からトイレ排泄への移行を試みた。利用者個々のニーズを把握し、オムツからトイレ排泄への取り組みを行った結果、ユニットスタッフの排泄に対する考え方が変化し、スキルアップとユニットケアの質の向上について発表されました。


7、嚥下食の舞台裏。ムース食の作り方。
  ★特別養護老人ホーム上士幌すずらん荘
  ★管理栄養士 渡辺瑞世氏

嚥下機能低下により普通の食事を召し上がれなくなった方へ「食事は見た目が9割(もちろん味も)」をスローガンのもと、下味を付けた食材の一品一品にトロミ剤を入れてミキシングし形成し直しながら、普通の食事と同じ見た目になるよう取り組んできたことについて発表されました。


8、においを嗅いで認知症改善
  ★介護老人保健施設クリアコート千歳
  ★精神科認定看護師 如澤学氏

昨年の同研究発表で3つの試料(カレー粉、香水、酢)を用いて簡易嗅覚テストを実施し、認知機能障害が重度なものほど有意に低得点となっていること、軽度認知障害者においても嗅覚障害をきたしていることが明らかになり、嗅覚と認知機能の関連性について示唆を得た。今回は、レモングラスの香料を使用し嗅覚を意図的に刺激することで、嗅覚や認知機能の改善を図れるかを調査した内容を発表されました。


✴【過年度優秀賞発表】✴
  汚名返上!!~介護職員から始める個別排泄コントロール~
  ★特別養護老人ホームかおる園
  ★介護職員 辻拓哉氏

施設内で当該ユニットの“下剤使用率No1を返上しよう!”と利用者の便秘改善を目標に、自然食品を通じた下剤外しを取り組んだ。個々の便秘の症状から“陰性便秘”と“陽性便秘”、“腹部膨満”など類型化し、日々の観察経過記録や情報を基に、それぞれ適したケアをPDCAサイクルを繰り返し実施した。結果、個々の改善状況は大小差はあるが一定の成果がみられた、その経過と今後の課題について発表されました。


✴✴✴【表彰式】✴✴✴
今年度の優秀賞は、
特別養護老人ホーム芦別慈恵園による「介護量を数値化する意味とは?」が選ばれました。
介護の仕事は「生活」を数値化し、見える化することが難しく、国家戦略にも取り込まれている内容です。今回の発表は介護に対する数値化でしたが、今後は「QOL(生活の質)」にも展開していけることを期待しています。と北海道老人福祉施設協議会副会長の波潟様より講評を頂きました。

優秀賞の評価は、全国老施協の評価基準にて選考しており、今回の優秀発表者の皆様には北海道老施協より
今年10月北海道札幌にて開催されます『平成30年度全国老人福祉施設研究会議(北海道会議)』への参加推薦をさせていただきます。


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研究発表をされた皆様、実践された施設職員の皆様、本当にお疲れさまでした。
どの発表も日々の実践の努力がなければ発表することのできない素晴らしい内容だと感じております。
個別ケアは、正解やゴールを決められるものではなく、常に進化し、より良いケアの提供を目指していくことが大切だと思っております。今回の研究発表が多くの施設で参考にし、より良いケアが提供されることを祈念申し上げます。

広報委員 田中